二人のガラス作家のための 回遊性ある住まい
友人であるガラス作家のご夫婦から、アトリエを設計してほしいと、うれしい依頼をうけた。
彼らの希望はアトリエと住居のあるシンプルな建築。平屋で犬がかえるような大きな中庭のある家。
敷地は、畑のなかにあるゆったりと傾斜した土地。 また彼らが所属する富山ガラス工房の正面にある土地であった。
そこへ作業に行き来するには便利だが、たくさんの人が出入りする公共施設なので、プライバシーの面が気になった。
考えたことは、閉鎖的なファサードにしプライバシーを確保する。大きな中庭をつくり そこに内部を開放する。
それと、制作と生活をわける規則正しい生活スタイルを、一つの建物の中でどう成立させるか?というとであった。
設計が進むなかで削り落とされる要素は、空間を徹底的にシンプルかつ合理化し、結果、厳しいコストの面にも貢献した。
すべての要素が理にかないシンプルであること、施主のものづくりと重なる視点。
傾斜地にあるため、そこに建物をさしこむと、奥の部分が土にもぐる。
その部分はアトリエとして使うには好都合で、半地下であるため環境が安定し、夏涼しく冬暖かい。
また床が土間であるため床下湿気の問題もない。半分、土(自然の断熱)でおおわれたアトリエとした。
各スペースの床レベルは半地下のアトリエを最下層として変化する。
アトリエから住まいに歩くと、スペースごとにレベルがあがり、仕事から生活へと気持ちがきり変わることを意図した。
アトリエ:創造の場 制作の場。吹きガラスと削りの作業をする2つの空間からなる。
住まい:生活の場 居間、キッチン、寝室がワンルーム。
通路1:内部動線。エントランスをかねる中間の場。接客をしたりもする。
通路2:外部動線。パティオの一部でソト。アトリエ1と住いのサンルームを繋ぐ。自分たちだけの生活動線。
パティオ:切りとられた外の世界。シンボルツリーとして、オリーブを植えた。
適度な距離をもってアトリエと住まいが向き合う。 いくつかの生活シーンを輪としてつないだ。
結果、生まれる、パティオ。 意識の中心がうまれ、空間が回遊し始めた。
二人のガラス作家のための住まい
つくる、住まう、本質的な二つの場が共存する。本来、住まいとはこのような場ではなかったか?!
住まうことの根源的なカタチを考える、すばらしい機会をいただいたプロジェクトであった
東北外観. 中の様子は見えないシルバーのシンプルな箱 向い側は彼らが所属するガラス工房本館でときおり利用するため、近接していることが作業能率を生む
腰までのコンクリートの外は土。 アトリエは半地下の空間であることがわかる パティオにむかった明るい場所ではガラス作品を削る作業が主